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多肉植物写真集Ⅱ(国際多肉植物協会発行)に掲載されたハオルシアの正しい種名と品種名

 多肉植物写真集Ⅱは労作ではあるが、残念ながら種名や品種名の誤りが多く、初心者や一般の方の誤解や混乱の元となっている。編集者の小林氏と協議の結果、既発行のソフトカバー版には正誤表を付け、ハードカバー版はハオルシアの部分だけ名称などを訂正して印刷し直すこととなった。次の表は主な訂正個所とその説明の要点をまとめたものである。ソフトカバー版に付される正誤表は次表の簡略版で、ISIJのホームページにも掲載予定である。この表には微細なローマ字表記間違いなど、小さな誤りは省略されている。なお国際栽培植物命名規約による表記法の概略は次の通り。

 ・品種名は大文字で始め、引用符(’ ’)で囲む。2語以上でもそれぞれ大文字で始めるが、ハイフンの後は小文字で始める。
 ・品種名は慣用句などを除きラテン語以外の言語でなければならない。したがって種名(ラテン語)は原則使用禁止である。
 ・品種名は翻訳(意訳)してはならず、発音通りヘボン式ロ-マ字で表記しなければならない。長音は長音記号(ō,ū 等)で表す。
 ・育成者に同意されない名称、既存品種と混同されやすい名称、特性を誤解させる名称などの品種名は無効である。
 ・産地名は品種名にできない。それが特異個体ならそうでない個体が混同され、また群落全体が特異形態ならそれは種だからである。

 また、この表では整理番号的名称や雑種の両親の種名を(ハイフンで)結んだ名称などは仮名として扱い、二重引用符(” ”、いわゆると言う意味)で囲んで表した。

Page 場所 旧名 正名 Correct name 注 Note
全般 本文中で変種となっているものはすべて独立種。また”KB-5”や”バディコン”(p.38) などは仮名である。
36 上段右 アルビスタ ヘッジホグ H. 'Hedgehog' Hedgehog はハリネズミ。ハオ研 15: 10 (2006) 参照
36 中段右 アラクノイデア変種セタタ アルビスピナ H. albispina ギガアラネア”gigas-aranea”かもしれない。
36 下段左 ニグリカンス ベンテリー H. venteri
37 上段左 バディア 月面 H. badia 'Getsumen' 所有者小林氏の新命名
37 下段左 バディア '池田' 薔薇 H. badia 'Bara' 育成者池田氏の新命名
38 下段右 バチリス すくなくともバチリスではない
39 中段右 'Big Green Gem' 大型グリーンジェム 'Ōgata Green Gem' グリーンジェムはグループ名
39 下段左 H. 'Bronze Castle' ブロンズ城 H. 'Bronzejō' 日本語名が正名なので、ローマ字表記は日本語の発音に合わせる。
40 上段左 コアルクターター グリーニー H. greenii
40 下段左 クロラカンサ デンテキュリフェラ H. denticurifera
40 下段中 Haworthia 'Calitzdorf' Haworthia Calitzdorp” 仮名(おそらく交配種)
40 下段右 クロラカンサ サブグラウカ H. subglauca
41 上段右 水晶コンプト 水晶玉 H. 'Suishōdama' 水晶コンプトは別品種。大型で、丸く盛り上がった暗い窓と網目模様が特徴。
41 中段左 木の葉 木の葉 H. comptoniana 'Konoha' 品種名は翻訳表記禁止
41 下段右 マリリン A アイリス H. 'Iris' 作出者金子氏の新命名。マリリンに似るが、白い窓に網目模様が特徴。
42 上段左 クーペリー錦 ピリフェラ錦 H. pilifera variegated 通称ピリフェラ錦(またはピリフェラ白斑)
42 下段左 クーペリー パレンス H. pallens
42 下段中左 クーペリー変種ディールジアナ ジョイアエ H. joeyae
42 下段中右 クーペリー ツルギダ H. turgida
42 下段右 クーペリー セルレア H. caerulea
43 上段左 クーペリー 村雨 H. 'Murasame' 小林氏の新命名。大きくて透明な、紫がかった窓が特徴。
43 中段左 ピリフェラ錦 オブツーサ錦 H. obtusa variegated 通称オブツーサ錦
43 下段左 クーペリー錦 オブツーサ錦 H. obtusa variegated 通称オブツーサ錦
44 上段左 コレクタ ラエータ H. laeta
44 上段右 コレクタ おそらく新種
44 中段中 コレクタ ジェイデア H. jadea
44 P.44, 45の上記以外のコレクタはすべてベイヤリ (H. bayeri)
44 下段左 H. correcta 'Gold' 黄金コレクタ H. Ōgon Korekuta Group コレクタ錦ノリ斑(全斑)の総称(グループ名)。グループ名は引用符を付けない。
45 下段右 キンビフォルミス ’ホイソンズポート’ メアリ H. meari n.n. 群落全体が特異型なら品種ではなく、種である。地名は「ホーソンズポート」
46 上段左 キンビフォルミス ’オベサ’ ブリンキア H. blinkia n.n. H. obesaは別種。また"obesa"はラテン語なので品種名には使えない。
46 上段中 キンビフォルミス セツリフェラ H. setulifera
46 上段右 キンビフォルミス ’ラモサ’ ラモサ H. ramosa
46 中段左 クーガエンシス シンビフォルミスではなく、H. transiens か H. incurvula の仲間。
46 中段右 コンパクト’プラニフォリア’ ラモサ H. ramosa
47 下段左 フロリブンダ ベークマニー H. beukmanii
47 下段中 ギガス・ハブドマディス デシピエンス H. decipiens
48 上段左 ヘレイ ジョネシアエ H. jonesiae
48 上段右 ヘルミアエ ベネチア H. venetia 本種は通常は鋸歯がない。
48 中段中 グラウカ アームストロンギー H. armstrongii
48 下段左 グラウカ ヘレー H. herrei
48 下段中 ヘルバケア オキシゴナ H. oxygona n.n.
48 下段右 ルプラ 星の王子 H. 'Hoshi-no-ōji'
49 上段左 ルリ殿錦 ルリ殿白斑 H. 'Ruriden Shirofu' ルリ殿錦はルリ殿の黄白斑。
49 上段右 リミフォリア リミフォリア交配 H. limifolia hybrid
49 中段右 コエルマニオラム マクマートリー H. mcmurtryi マクマートリーと写真取違え
49 下段左 風雅 ブラックレイン H. 'Black Rain' 風雅は別品種
50 上段中 アトロフスカ クロムチカ H. chromutica クロムチカはレツーサとムチカとの中間型。
51 上段右 マルギナータ カリナータ H. carinata n.n.
51 下段左 マライシー・ノタビリス 青い鳥 H. nitidula 'Aoi Tori' 青い鳥はニチドラの斑入り品種
51 下段右 マルギナータ カリナータ H. carinata n.n.
52 上段左 バテシアナ錦 はな H. batesiana 'Hana' 所有者藤川氏の新命名 (導入者小林氏の同意のもとで)
52 中段左 クリスタル万象 ギヤマン H. maughanii 'Giyaman' 金子氏の新命名。クリスタルは後位同名。
52 下段中左 万象 雅 (みやび) H. maughanii 'Miyabi' 林育成、命名品
52 下段右 万象 稲光(いなびかり) H. maughanii 'Inabikari' 篠原氏育成、命名品
54 上段右 'Angel's Tears' 天使の泪 H. 'Tenshi-no-namida' 品種名は翻訳表記禁止。Bob Kent 氏育成品。西氏命名。
54 中段左 マクマートリー コエルマニオラム H. koelmaniorum コエルマニオラムと写真取違え
54 中段右 ミニマ ウエレンス H. wellens n.n. = 秋天星(H. corallina ではない)
54 下段右 ミラビリス’ハイランド’ ベークマニー H. beukmanii 'High Land' 神楽獅子のダルマタイプと思われる。
55 中段左 ディベルゲンス デバーシフォリア H. diversifolia 名称混同。原記載はH. triebneriana v. diversifolia
55 下段左 パラドクサ 産地が正しければ新種であろう。
56 中段中 モーリシアエ サカイ H. sakaii
56 下段左 ムクロナータ ユニカラー H. unicolor
56 下段右 ムクロナータ ハブドマディス H. habdomadis
57 上段右 H. mutica 'Crystal' クリスタルムチカ H. 'Crystal Muchika' 'Crystal' は後位同名。玉扇、ピグマエア、ラエータで使用済み。
57 中段中 シルバームチカ シルバニア H. 'Silvania' 品種名にラテン語は使用禁止
57 下段右 裏窓ムチカ 本間 H. 'Honma' 本間氏育成品。裏窓ムチカは後位異名(ハオ研 18: 3 (2), 2007)
59~60  59頁中段左、'深海'、60頁上段中、同右はH. tricolor (黒ピクタ)
60 上段左 ピクタ 青木ピクタ H. picta 'Aoki Pikuta' ゴールドキング、グレースレディは異名
60 上段右 ピクタ オルフェ H. tricolor 'Orfeu' 林育成、命名品(ハオ研 20: 8, 2009)
60 中段中 プルケラ パリダ H. pallida
61 上段右 プミラ アオオニ H. ao-onii
61 このページの上記以外のH. pumilaの正名はH. maxima。62頁上段左も同じ。
61 中段左 プミラ ジュラシックパーク H. 'Jurassic Park' Bob Kent 氏育成品。ハオルシア研究7号とは別個体
62 中段中 H. pulchella v. globifera グロビフェラ H. globifera この植物はプルケラよりもレティキュラータに近く、その祖先と思われる。
62 中段左、右 変種アルゲンテオマクローサ シルビアエ H. silviae
62 下段右 レチキュラータ ヘーリンギー H. hurlingii 63ページ上段左と写真取違え
63 上段左 ハーリンギー マキュラータ H. maculata 62ページ下段右と写真取違え
63 上段中 レツーサ クロムチカ H. chromutica
64 下段左 H. 'Super Galaxy' 超銀河 H. 'Chō Ginga' 品種名は翻訳表記禁止。Bob Kent 氏育成品。小林氏命名。
64 下段右 花葵 花葵 この品種は大久保氏実生苗から西島氏が選抜、育成したもの。命名:林
65 中段右 スプレンデンス交配 イマジン H. 'Imagine' Bob Kent 氏育成品
66 中段左 シュガーボルシー ボルシー錦 H. bolusii variegated 品種名にラテン語は使用禁止。育成者は井出氏
66 下段中 竜鱗 雷鱗 H. tessellata v. tuberculata
67 上段左 微小玉扇 パピラリス H. papillaris The Genus Haworthia (Breuer, 2010)で記載された。「乳頭突起のある」
67 中段右 玉扇 敦盛 H. truncata 'Atsumori' 福屋氏育成、命名品
67 下段左 玉扇 銀緑 H. crassa n.n. 'Ginryoku' 福屋氏栽培品
68~69 68頁上段右、同中段中、69頁中段右はH. crassa n.n. (この型の玉扇はH. truncata f. crassa (Poelln. 1938)として記載されている。)
68 上段左 ブルー玉扇 真珠 H. crassa n.n. 'Shinju' 須古星氏育成、命名品
68 中段中 玉扇 原Ⅲ 臼田 H. crassa n.n. 'Usuda' 育成者林の新命名
68 中段右 鬼岩城 稲妻鬼岩 H. 'Inazuma Kigan' 育成者久保田氏の新命名。金子氏実生苗から久保田氏が選抜、育成。
68 下段中 玉扇 U-25 藻汐 H. truncata 'Moshio' 作出者海野氏の新命名
69 中段右 アイエスアイ アイエスアイ実生 H. ”ISI seedling”
70 上段中 ベノーサ コリアセア交配 H. coriacea hybrid
70 中段左 グラニュラータ 昇竜 H. 'Shōryū' H. graminifolia x H. wimii。Hammer氏育成?
71 中段左 ブルーダイアモンド 川東氏実生。池田氏育成。命名者:阪井氏。
71 中段中左 モルドール 川東氏実生。花井氏育成、命名。
71 中段中右 白魔 銀孔雀 H. 'Gin Kujaku' 隣の銀孔雀と写真取違え
71 中段右 銀孔雀 白銀城 H. 'Hakuginjō' 隣の白魔と写真取違え。白魔、ケバケバマジョールは異名
71 下段右 白絹絵巻 白銀絵巻 H. 'Hakugin-emaki' 白絹絵巻はより繊細。作出、命名は原田氏。
72 上段左 ザントネリアナ アップラナタ H. applanata n.n.
72 上段右 白銀城 白帝城 H. 'Hakuteijō' H. 'Green Gem' x H. wimii。育成、命名者:山城氏
72 下段左 雄姿城錦 ルリ殿の光 H. 'Ruriden-no-hikari' ルリ殿錦は黄白斑。


2011.6.4


訂正とお詫び
万象「ソルトレーク」は「白磁レンズ」と同一としていましたが、会員から指摘があり、再度検討した結果、別品種であると判定しました。
お詫びして訂正します。 相違点は、
(1)「ソルトレーク」は窓の中央が高く盛り上がるのに対し、「白磁レンズ」は平である。
(2)したがって「ソルトレーク」は窓と葉の境目が鈍角なのに対し、「白磁レンズ」は鋭角気味(90°近い)である。
(3)「ソルトレーク」には、窓の中に緑の点がときどき入るが、「白磁レンズ」にはほとんどない。
(4)「ソルトレーク」の方が窓の縁の切れ込みが深い。
などです。 高瀬氏には判定ミスをお詫びします。


2011.6.16